ダイブコンピュータは当たり前
2009.11.26
リアルタイムで無減圧潜水時間を計算し教えてくれる、スグレモノのダイブコンピュータ(略してダイコン)。
安全なダイビングのために今やなくてはならない器材となり、フィン、マスク、シュノーケルといった3点セットを買ったら
次はダイブコンピュータ、という人もいるくらい重要な器材になってきています。
1990年代に一般のレジャーダイバーにも普及し始め、今や持っていないダイバーのほうが少ないぐらいです。
現在もさまざまな改良が加えられ、水深ごとに適正な浮上スピードを切り替えたり、浮上途中に何回か一時停止する
DeepStopという考え方を取り入れたり、といったように日々進化しつづけています。
ダイブコンピュータがあれば安全?
では、ダイブコンピュータは、ダイビングの安全性向上に役立っているんでしょうか?
この問いに、恐らく多くのダイバーが「YES」と答えることと思いますが、その思いを覆すような数字があります。
T(テーブル)6という最新のプログラムで再圧治療を行っている数少ない施設ということで有名な
東京医科歯科大学医学部附属病院の高気圧治療部で減圧症の治療を受けたレジャーダイバーの数は、1980年代は年間数人、
90年代も年間ほぼ20人以内で推移していたんですが、2000年以降急増し、2004年以降は毎年350人を超えていて、再圧治療を行う
チャンバーはフル稼働の状態らしいです。
(減圧症の治療を受けたレジャーダイバーの患者数推移)
昔はダイバーそのものが少なかったから、と思うかもしれませんが、実はダイバー人口が最も多かったのは90年代前半なんです。
この患者数増加の要因は、いろいろあるかも知れません。
一つは、2001年に東京医科歯科大学医学部附属病院に新しいチャンバーが導入され、受け入れ態勢が充実したこと。
他には、インターネットが普及したこと。これにより、いろいろな情報が得やすくなり、東京医科歯科大学医学部附属病院の治療方法が進んでいる
といった情報がダイバーの間で広まったことがあるかもしれません。
しかし、こういった事情を考えても、2000年以降の急増はちょっと説明がつきにくい気がします。
他に考えられる要因として、ダイブコンピュータが挙げられます。ダイブコンピュータの普及の時期と符号していることを考えると、
ダイブコンピュータは本当に安全性向上に貢献しているの?、むしろ減圧症患者を増やしているんじゃないの、とも思いたくなります。
減圧症患者増加の原因
もしダイブコンピュータの普及が減圧症患者増加の要因の一つになっているとしたら、問題はひとえに、我々のダイブコンピュータの
使い方にあると言えるでしょう。
無減圧潜水時間がデジタルでバッチリと数値表示されるため、その時間内であれば大丈夫といった錯覚に陥りやすくなります。
無減圧潜水時間が10分と表示されれば、「あっ、まだ10分潜れる」と思ってしまうのが人情というもの。
DECO(減圧停止)さえ出さなければOK、とばかりに限界ギリギリまで潜ってしまうダイバーが多くなり、
結果レジャーダイバーの間でより深刻な神経系の減圧症患者が増えている、といった指摘もあります。
もしそうだとしたら、ダイビングの安全性向上のために開発されたダイブコンピュータの普及により、減圧症患者が急増している
といった、何とも皮肉な話になってしまいます。
「ダイコンなしじゃ、怖くて潜れないヨ」といった話を聞きますが、実はダイブコンピュータにすべて依存し、むしろ
今のほうが怖い潜り方をしている、とも言えるのです。
ダイブコンピュータのと正しい付き合い方は・・・
ではダイブコンピュータは意味がないのかというと、そうではなく、限界値をはっきり教えてくれるという意味で、とても
役立つ道具です。
なので、無減圧潜水時間が10分と表示されていれば、「あと10分は大丈夫」と考えるのではなく、「危険ゾーンまであと
10分」と考えるべきでしょう。
ただ、当然のことですが、個人差や日々の体調までは考慮してくれません。従って、その10分という時間も、実際には
残り5分かも知れませんし、もしかしたらもう危険ゾーンに突入しているかも・・・。十分な安全マージンが必要な所以です。
減圧症で一生車椅子、なんてのはゴメンです。知らない方は「エーーッ、まさか?」と思うかも知れませんが、大げさに
言っているのではありません。
減圧症発症のメカニズムがまだ十分に解明されていない現実を考えると、ダイブコンピュータの過信は禁物。
これからも自分なりに安全マージンを考えながら、ダイブコンピュータべったりではなく適度な距離を保って付き合って
いこうと思います。
<参考サイト>
ダイビングギアメーカー TUSAの
「減圧症の予防法を知ろう」
元東京医科歯科大学医学部附属病院医師 山見信夫氏監修の
「ダイビング医学」