環境への配慮
最近エコ(エコロジー)ということがよく言われるようになるとともに、ダイビングの世界でも、
エコ・ダイバーという言葉を聞くようになりました。いわば人間と他の生物との調和を目指す
ダイバー、環境にやさしいダイバーということでしょうか。
海にタバコを捨てない、ゴミを残さないといったことは当然ですが、より進んでサンゴを折らない・
傷つけない、ひっくり返した岩などを元に戻しておくといったことがダイバーのモラルとして
言われるようになりました。
ダイバーなら誰でもサンゴは貴重な生物であることはよく知っていますので、サンゴがあるところでは
皆気をつけたりします。またガイドが岩などをひっくり返してその裏に潜む生物などを見せた後、
きちっと元に戻したりするのを見て、一般のダイバーにも環境への配慮がかなり浸透してきたように思います。
ダイビングに慣れ、周りのことに注意が払えるようになると、自然にそういったことにも気をつけるようになります。
でも、それだけで充分なのでしょうか。サンゴがあれば当然気をつけます。でも実は、
サンゴ以外の場所でも、水底であればほとんどの所が海の生物の生活の場所になっているのです。
ハゼの観察
私もよくやりますが、砂地に珍しいハゼなどがいたりすると、ハゼを穴の中にひっこめて
他のダイバーのヒンシュクを買わないよう、呼吸も極力静かに押さえてゴボゴボと
いった大きな排気音を出さないよう細心の注意を払いながら、腹這いになってジワジワと
にじり寄ります。こうすれば確かにお目当てのハゼを驚かすことなくじっくり
観察できるでしょう。
でも、実は腹這いになった身体の下の砂地の中には、恐らくたくさんの
小さなエビ・カニといった甲殻類が潜んでいるに違いないのです。
しかも、体が小さいだけに、ダメージはその分大きいのではないでしょうか。
砂地に着底するとき、一瞬そのことが頭をよぎります。でも、ハゼ見たさに結局はにじり寄って
しまうのです。お目当てのハゼには最大限の注意を払うのに、身体の下の砂地に生息する
生物のことにはお構いなしの状態です。
環境にやさしいダイビングとは?
本当に環境に配慮したダイビング、海の生物にやさしいダイビングを行おうと思えば、
ダイビング中はずっと中性浮力を保ち、岩に捕まったり水底に着地することなく、
水中に浮かんだ状態でいることが理想的なのでしょう。
でも、これは非常に難しいことです。技術的に難しいのではなく(そこそこ潜り込めば自然に
中性浮力がとれるようになり、よほど浅いところでない限り、着底することなくダイビングを楽しめるようになります)、
掴まったり着底して身体を安定させる必要がある状態で、あえてそれをしないようにするのが難しいのです。
地形派のダイバーで水中景観だけが楽しみの目的であれば別ですが、フィッシュ
ウォッチング派やカメラ派のダイバーにとっては、なおさら困難です。もし掴まったり
着底できなければ、ダイビングの目的の多くを断念しなければなりません。
とっていいのは写真だけ、残していいのは・・・
そう考えると、結局我々ダイバーが海の生物に影響を与えずダイビングを楽しむことは
不可能に思えてしまいます。本当は人間が海の中に入らないことが一番なのでしょう。
でもそこまで考えてしまうと、人々の楽しみや趣味のほとんどができなくなって
しまうのではないでしょうか。結局、我々人間は自然や地球環境、他の生物といったものに
なんらかの影響を与えながら、生きてゆかざるをえないのだと思います。
でも、その影響を少しでも小さくするよう努力することは大事なことですし、
我々ダイバーに求められていることだと思うのです。
「エコ」という言葉さえない随分昔に、テレビCMのコピーで、「とっていいのは写真
だけ、残していいのは足跡だけ・・・」という言葉を初めて聞いたときの強烈な印象が、
今も頭のなかに残っています。しかも、我々ダイバーには
「足跡」すら残さないように求められています。
我々の子供や孫の世代の人たちもダイビングが楽しめるよう、海の生物にやさしい
ダイビングを心がけてゆきたいと思うのです。